キッチンカーの出店料とは?基本的な仕組みと費用形態

キッチンカーで営業するには「出店料」がかかるのが一般的です。これはいわば“場所を借りるための費用”であり、売上や利益に直結する重要なコスト要素でもあります。ただし、出店料の仕組みは一律ではなく、出店場所や契約内容によって大きく異なります。ここでは、出店料の基本的な「種類・形式・費用の内訳」を解説します。
出店料の種類(固定・歩合・場所代込み)
キッチンカーの出店料には、大きく分けて以下の3タイプがあります。
- ❶ 固定料金制(定額)
- 1日〇〇円/1回〇〇円など、あらかじめ決まった金額を支払う形式
- 例:地域のマルシェで「1日5,000円」など
- 【メリット】:売上が多ければ実質のコスト比率が下がる
- 【デメリット】:売上が少ない日も費用は発生するためリスクも
-
- ❷ 歩合制(売上の%)
- 売上の〇%を出店料として支払う方式
- 例:売上の10〜20%(イベントや商業施設で多い)
- 【メリット】:売上に応じて支払い額が変動するため安心感あり
- 【デメリット】:売上が高いと「たくさん売っても手元に残らない」と感じることも
-
- ➌ 場所代込み・業務委託型
- 売上の一部を本部に納める代わりに、場所の手配や運営全体がセットになっている
- 主にフランチャイズ契約・企業敷地内営業などで見られる形式
- 【メリット】:出店交渉が不要でラク
- 【デメリット】:場所が選べない、利益率が下がりやすい
出店形態ごとの違い(イベント/常設/企業内など)
出店料は、「どこで営業するか」によって金額感も支払い形式も大きく変わります。
- ❶ イベント出店(フェス・マルシェ・花火大会など)
- 【料金相場】:1日5,000円〜30,000円程度/売上の10〜20%が目安
- 【特徴】:来場者が多く売上が上がりやすいが、天候や立地で左右されやすい
- 【注意点】:イベント主催者との契約が必要、電源・水の有無も要確認
-
- ❷ 常設営業(商業施設・道の駅・オフィス街など)
- 【料金相場】:日額3,000円〜/または月額制(例:月5万円)
- 【特徴】:安定した集客と出店が可能。平日はランチ営業、土日は観光地などで活用
- 【注意点】:ルールが厳しい(ゴミ処理・営業許可・電源制限など)
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- ➌ 企業敷地内・病院・学校などの契約営業
- 【料金相場】:交渉次第で「無料」もあり得る。逆に一律数千円も
- 【特徴】:福利厚生の一環として歓迎されることも多く、穴場的存在
- 【注意点】:事前審査や社内ルールの把握が必要
出店料が発生する理由と内訳
出店料は単なる「場所代」ではなく、さまざまなコストやメリットを含んだ“対価”と考えるべきです。
- ✅出店料に含まれる主な内訳:
- ◉ 場所の使用権利料(公園・施設の管理者に支払う代金)
- ◉ 電気・水道の設備利用費(イベントでは追加料金がかかることも)
- ◉ 集客のための告知・運営費(イベントや施設側の広告コストなど)
- ◉ ゴミ処理や警備スタッフの配置コスト(大規模イベントで顕著)
したがって、出店料は「高ければ損」「安ければお得」という単純なものではなく、“何が含まれているのか”“その対価に見合う集客があるか”を見極めることが大切です。
出店料の相場はいくら?場所・規模別の料金目安

キッチンカー出店を検討する際、最も気になるのが「実際の出店料はいくらぐらいなのか?」ということ。料金は場所や主催者、エリアによって異なりますが、おおよその相場感を把握しておくことで、無理のない出店計画が立てられます。以下に、主要な出店形態ごとの料金目安をご紹介します。
イベント出店(フリマ・フェス・花火大会)の相場
イベント出店は「短期集中型」の営業スタイル。1日で多くの売上が見込める反面、出店料もやや高めに設定されている傾向があります。
イベント種類 |
出店料の目安 |
小規模フリマ(地域商店街) |
3,000〜8,000円 |
中規模マルシェ・週末市 |
5,000〜15,000円 |
地域フェス・音楽イベント |
10,000〜30,000円 |
花火大会・大型フェス |
30,000〜50,000円以上もあり |
- 出店料+電源使用料(1,000〜5,000円)+ゴミ処理費などが別途かかることもあるため、「見積書で総額を確認」しておくことが大切です。
常設施設(商業施設・道の駅・オフィス街)の相場
常設施設では、平日ランチや週末の観光需要など、安定した営業がしやすい環境が整っています。出店料は比較的リーズナブルで、長期出店契約になるケースもあります。
出店場所 |
出店料の目安(日額 or 月額) |
商業施設 駐車場 |
日額 3,000〜10,000円前後 |
道の駅・観光スポット |
日額 5,000〜15,000円 or 月額5〜15万円 |
オフィス街(ランチ) |
日額 2,000〜6,000円 |
- 中には「売上に応じて交渉可能/水道電気完備でコスパ良好」という好条件の施設もあり、出店先選びが収益を大きく左右します。
売上歩合制のケース
歩合制とは、売上に応じて一定の割合を主催者に支払う方式です。リスクが少ない反面、利益を圧迫する場合もあります。
出店形態 |
歩合の目安 |
商業施設の催事 |
売上の10〜15% |
百貨店やポップアップ |
売上の20%前後 |
大規模イベント |
売上の15〜25% |
- 例えば「売上10万円・歩合20%」なら2万円が出店料。売れるほど割合が重く感じるため、高単価・高回転商品でなければ利益が残りにくい点に注意が必要です。
出店料が無料 or 格安で出せるスポットとは?

「キッチンカー=出店料が高い」というイメージを持たれることもありますが、実は無料 or 格安で出せるチャンスは意外と多いのが現実です。この章では、コストを抑えつつ集客も期待できる“穴場的スポット”の探し方をご紹介します。
行政・地域イベントでの無料出店の探し方
地方自治体や商工会が主催する地域イベントの中には、「出店料無料」や「謝礼付き出店」などの好条件が用意されているケースがあります。
- ✅代表的な例:
- ◉地域振興イベント(商店街フェア・市民祭りなど)
- ◉子育て応援フェス/町おこしマルシェ
- ◉地方自治体主催の災害訓練・福祉イベントなど
- 💭探し方のコツ
- ・市区町村の観光課/商工観光課のWebサイトを定期チェック
- ・「◯◯市 キッチンカー 募集」「◯◯町 出店申請」で検索
- ・商工会議所の会報・掲示板・LINEオープンチャットも有効
💡自治体イベントは“地元事業者優先”の傾向があるため、所在地の証明ができる名刺・チラシ・SNSがあると有利です。
スーパー・企業敷地など“逆に歓迎される”ケース
大手スーパーや物流企業、工場などの施設では、「お昼ごはんや集客施策が欲しい側」として、キッチンカーを“逆に呼びたい”ケースも増えています。
- ✅実際に歓迎されるスポット:
- ◉スーパーの駐車場(集客UPを狙う店舗)
- ◉工場・倉庫・物流センター(従業員向けランチ対策)
- ◉高齢者施設・病院前(来院者・スタッフ向け)
- ◉マンション管理組合の夏祭り・自治会行事
- 💡ポイント
- ・「平日ランチ」や「イベント日限定」など目的が明確な場合が多く、交渉が通りやすい
- ・「ゴミは持ち帰る」「騒音は最小限にする」「時間厳守」など条件付きで無料出店が可能
🔁まずは知人経由や地域コミュニティの繋がりからアプローチするのも効果的です。
SNSや掲示板で見つかるスポット例
最近は、SNSやオンライン掲示板を活用して出店先を探す・募集する流れも増えています。
- ✅活用すべき媒体とキーワード:
- ◉Twitter(X)/Instagram
- ↳ ハッシュタグ例:#キッチンカー募集 #出店者募集中
- ◉ジモティー
- ↳ 地域ごとの「イベント出店者募集」などに掲載されていることも
- ◉Facebookの地域グループ
- ↳ 商店街・町会・イベント主催者が直接投稿している場合あり
- ◉LINEオープンチャット
- ↳ 「関東キッチンカー情報」「東海エリアフードトラック」など実用性◎
💡DMやコメントで直接主催者にアプローチすることで、“まだ掲載前”の先着枠を確保できることもあります。
出店料を抑える交渉術と注意点

出店料は「決められたものを払うだけ」と思われがちですが、実は“交渉可能”なケースも少なくありません。特に個人主催のイベントや民間施設では、条件次第で値引きや免除になる例も多数存在します。ここでは、出店料を抑えるために知っておきたい交渉のコツと注意点をご紹介します。
交渉できるタイミングと相手の見極め方
出店料の交渉は「誰に」「いつ」言うかで、成功率が大きく変わります。
- 〘タイミング〙
- ‣ イベント1〜2週間前〜直前:出店枠に空きがあると交渉成立しやすい
- ‣ 閑散期/平日出店時:主催側も空きを埋めたい時期は柔軟対応しやすい
- ‣ 継続出店の打診時:2回目以降は条件改善が通りやすい
- 〘相手の見極め方〙
- ‣ 出店担当者が裁量を持っているか?(イベント主催 vs 管理会社)
- ‣ キッチンカー経験がある主催者か?(経験者は相場感を理解している)
- ‣ 自分が集客に貢献できる要素を持っているか?(SNSフォロワー数、見た目、話題性など)
💡相手が「売上保証」や「来場者数UP」を目的としている場合、集客貢献の提示は交渉成功の鍵になります。
好印象を与える提案トーク例
交渉では「値切り」ではなく「提案型コミュニケーション」が基本です。印象を損なわず、相手も納得できる伝え方が重要です。
- 〘よく使われる提案フレーズ〙
- ‣ 「今後も継続出店を前提に、初回は出店料を少し抑えていただけませんか?」
- ‣ 「SNSで事前にイベント紹介させていただきますので、広報協力割引など可能でしょうか?」
- ‣ 「平日ということで、少し条件を見直していただけるとありがたいです」
- ‣ 「今回限りではなく、月2回出店させていただければ、出店料の調整をご相談できないでしょうか?」
💡「お願いベース+具体的な“こちらの貢献要素”を提示」するのが交渉のコツです。
交渉時にトラブルを避けるポイント
せっかく交渉が通っても、伝達ミスや誤解が生じるとトラブルに発展するリスクがあります。交渉後の確認と記録は徹底しましょう。
- 〘トラブル防止の基本ルール〙
- ‣ 口頭で済ませず、メールやLINEで合意内容を文面に残す
- ‣ 「出店料は無料」と言われた場合でも、電源使用料・清掃協力費など他費用の有無を確認
- ‣ 雨天中止時の取り扱い(返金/振替)も事前に確認
- ‣ 明文化された契約書がある場合は、「変更点は追記した書面で確認」が理想
💡小さな金額でも、曖昧なまま出店すると信頼関係が崩れやすいため、ビジネスマナーとしての配慮が大切です。
出店料を含めた収支バランスと利益設計の考え方

キッチンカー経営で成功するには、ただ出店料を「安く抑える」だけでは不十分です。大切なのは、原価・人件費・出店料などを含めた総合的な収支バランスと、売上の伸ばし方を理解して設計することです。
原価・人件費・出店料の理想バランスとは
売上から経費を引いた「営業利益」を安定的に確保するためには、費用構成をバランスよく設計することが必須です。
費用項目 |
割合の目安 |
原価(食材費) |
売上の25〜30%以内 |
出店料 |
売上の10〜20%以内 |
人件費 |
売上の10〜15%以内 |
その他経費(ガス・包装資材など) |
売上の10%前後 |
営業利益 |
20〜30%以上が理想 |
- つまり、出店料が売上の20%を超える場合は、他コストの圧縮 or 売上アップの工夫が必要です。
出店料が高い=失敗ではない理由
出店料が高いと「損しそう」と感じがちですが、その出費に見合う売上が期待できるかどうかが重要な判断基準です。
- ✅出店料が高くても出す価値があるケース
- ◉ 集客力の高いイベント(フェス・花火大会など)
- ◉ メディア取材・SNS拡散など宣伝効果が見込める場合
- ◉ 平均単価が高い or 売り切れ必至の人気メニューを扱うとき
例えば:
「出店料が3万円でも1日で売上15万円/利益5万円なら十分成功」と言えます。
💡「出店料が高いか安いか」よりも、「利益が残るかどうか」「次の営業につながるかどうか」で判断することが大切です。
収益を伸ばす「回転率」と「単価」の最適化
利益を残すためには、出店料のコントロールだけでなく、売上を伸ばす“攻め”の設計も必要です。そのカギとなるのが「回転率(どれだけ多く売れるか)」と「単価(1品あたりの価格)」の最適化です。
- 🆙売上アップの具体策
- ✓ 回転率UP:提供スピードを早める/事前注文受付/メニューを絞る
- ✓ 単価UP:セットメニュー販売/+100円トッピング/ドリンクセット化
- ✓ リピート率UP:SNS連携/クーポン配布/次回予告POP
💡「平日ランチは回転率重視」「週末イベントは単価アップ重視」など、営業場所や客層に応じて戦略を切り替えることもポイントです。
まとめ|出店料で損しないために大切なこと

キッチンカーの出店料は「ただの経費」ではなく、売上・利益・今後の営業方針すべてに関わる重要な判断材料です。目の前の金額だけで一喜一憂するのではなく、「その出店がトータルで利益につながるか」を見極める力が、継続的に稼げるキッチンカー経営につながります。
初心者が見落としがちな3つの注意点
キッチンカー初心者が出店時に失敗しやすいポイントを、以下にまとめます。
- 🔴出店料以外の“隠れコスト”を見落とす
電源使用料・ゴミ処理費・人件費・駐車場代など、見積もり以外にかかる費用を想定しておくこと。
- 🔴「安い=お得」と判断してしまう
安くても人通りが少なければ、結局赤字になりやすい。
- 🔴契約内容を曖昧なまま出店してしまう
口頭契約だけで進めると、後からトラブルになりやすい。必ず文面で条件を確認。
無料や安さに飛びつく前に考えるべきこと
「出店料無料」や「格安」という言葉に惹かれるのは当然ですが、それが“本当にお得かどうか”は別問題です。
- 【チェックポイント】
- ✅集客力はあるか?(平日/週末/天候の影響)
- ✅宣伝効果や再出店のチャンスがあるか?
- ✅その場所での出店が、自分のメニュー・導線とマッチしているか?
- 出店料が安くても、売上ゼロ・ブランドイメージ悪化・時間の浪費になっては本末転倒です。
最終的に“利益が残る”出店スタイルとは?
利益が残る出店を続けるためには、短期的な出店料の安さより、長期的に“成果の残る営業”を目指す視点が重要です。
- 【利益が残る出店スタイルの特徴】
- 🔵出店料の費用対効果を数字で判断できている
- 🔵客単価や回転率を調整し、出店条件に最適化している
- 🔵SNSやリピーター施策で“出店するたびにファンが増える”仕組みがある
- 🔵同じ場所・主催者と信頼関係を築き、優遇条件で出店できるようになっている
💡最終的には、「この出店は“安いかどうか”ではなく“利益が残るかどうか”」という視点で判断することが、キッチンカー経営者として一歩抜き出るための鍵になります。