2025/08/06

キッチンカーの内装は、単なる“見た目”以上に売上・作業効率・衛生・ブランドイメージに直結する重要な要素です。限られた空間をどう活かすかで、事業の成功率は大きく変わります。
キッチンカー内装の最も重要な役割は、スムーズなオペレーションを実現すること。具体的には以下のような効果が期待できます。
例えば、シンクの位置が使いにくいだけで手洗いが疎かになったり、冷蔵庫が奥にあると在庫確認が遅れたりします。結果としてクレームやロスが増えることもあるため、機能美を意識した内装設計が欠かせません。
キッチンカーは“動く店舗”。つまり、内装そのものがブランディングツールとして機能します。
たとえば、木目調の内装+ドライフラワーでナチュラル系スイーツ店を演出すれば、コンセプトが明確になり、単なる「移動販売」から“世界観のあるお店”として認識されます。
初心者が陥りがちな内装トラブルには、以下のようなものがあります。
これらはすべて、“開業前の設計段階で回避できる”ものばかり。失敗しないためには、実際に営業するイメージを持ちながら内装を設計することが重要です。

キッチンカーは限られた空間で「調理・接客・提供」のすべてをこなすため、レイアウトの最適化が売上や疲労度に直結します。ここでは、効率よく営業できるレイアウト設計のポイントとパターンを紹介します。
キッチンカー内装における「導線」とは、人が作業中に無駄なく移動・動作できる経路や流れのこと。以下の3つを意識するだけで、調理スピードと疲労感は大きく変わります。
調理内容や営業スタイルにより、キッチンカーの内装レイアウトは変わります。以下に代表的なパターンを紹介します。
営業スタイルによって、レイアウト設計の「優先順位」は変わってきます。

キッチンカー営業を始めるうえで、保健所から営業許可を取得することは絶対条件です。とくに東京都では、保健所の内装基準が他地域よりも厳格な傾向があるため、あらかじめ設備・素材・設計に注意する必要があります。
東京都の保健所基準では、以下の「必須設備」が整っていなければ営業許可は下りません。
| 設備項目 | 基準・条件内容 | 
|---|---|
| 給水タンク | 40リットル以上の容量(飲用に適した水) | 
| 排水タンク | 給水タンクより10L以上大きい(=50L以上)が必要 | 
| 手洗い設備 | 給湯不要でもOK/専用シンク・ハンドソープ・ペーパー必須 | 
| 二槽シンク | ※食器類を使用する場合は「洗浄槽+消毒槽の2槽」が必要 | 
| 冷蔵設備 | 10℃以下での保存が可能な冷蔵庫・ストッカー | 
| 食品保管スペース | 食材と用具を区分して保管できる清潔な棚・収納 | 
| 換気扇・網戸 | 揚げ物・焼き物がある場合は換気扇+虫除け対策が求められる | 
保健所の実地検査では、以下のような「チェックリスト」に基づいて内装が確認されます。
営業許可が通らない原因は、意外と初歩的なミスや見落としであることが多いです。
| NG例 | 改善策 | 
|---|---|
| 手洗いシンクが調理用シンクと兼用になっている | 専用の手洗い器を独立設置する(※保健所の必須条件) | 
| 排水タンクが給水と同容量(例:40L:40L) | 排水は給水より10L以上多くする(例:40L:50L) | 
| 木製の棚や台をそのまま使用 | ステンレス製や防水コーティングされた素材に変更 | 
| 食品と洗剤・清掃用具が同じ場所に保管 | 収納場所を完全に分けてラベリング管理を徹底する | 
| 網戸なしでドアを開け放し | 虫の侵入防止策(網戸・カーテン・密閉)を施す | 

キッチンカー内装の費用は、設備内容・車両の状態・業種・自作or外注かによって大きく変わります。この章では、コスト相場と節約の工夫を具体的に解説します。
キッチンカーの内装費用は、車両代と合わせて総額150万〜350万円程度が一般的です。内訳の目安は以下の通りです。
| 項目 | 中古ベースの費用感 | 新品ベースの費用感 | 
|---|---|---|
| 給排水・シンク設置 | 約5万〜10万円 | 約10万〜20万円 | 
| 調理機器(冷蔵庫、IH等) | 約10万〜20万円 | 約20万〜40万円 | 
| 内装仕上げ・断熱・棚 | 約10万〜15万円 | 約20万〜30万円 | 
| 電気・照明・換気設備 | 約5万〜10万円 | 約10万〜15万円 | 
| 合計 | 約30万〜60万円 | 約60万〜100万円以上 | 
費用を抑えたい人にとって、内装DIYは魅力的な選択肢ですが、保健所基準とのバランスを考える必要があります。
| メリット | デメリット | 
|---|---|
| 費用を大幅に節約できる(業者の半額以下も可) | 設備設置や保健所基準の解釈を自力で調べる必要あり | 
| 自分好みの内装・デザインが反映できる | 作業時間・工具・知識がないと難航することも | 
| 保守・修理も自分で対応しやすくなる | 万が一施工ミスがあると営業許可が下りない可能性 | 
| メリット | デメリット | 
|---|---|
| 保健所基準に沿った設計でスムーズに許可が取れる | コストは高め(+30万〜50万円が一般的) | 
| プロのノウハウで作業効率の良いレイアウトに | 納期・打ち合わせの手間がかかる | 
中古車を購入する際には、「価格の安さ」だけで選ぶと後悔するケースも少なくありません。以下のチェックポイントを意識して、内装トラブルを防ぎましょう。

キッチンカーは“移動式店舗”であると同時に、第一印象で選ばれるブランド空間でもあります。ただし、見た目にこだわるだけではなく、清潔感・衛生管理・実用性のバランスがとれた内装設計が求められます。
提供するメニューによって、最適な内装のテイストや配置も変わります。以下に代表的な業種別の事例を紹介します。
🍰🍪スイーツ系(クレープ・焼き菓子など)
‣可愛らしさ・温かみのあるデザインが人気
‣木目調カウンター・パステルカラー・手描き風黒板など
‣写真映え+SNS投稿されやすさ重視
🍛🍗カレー・がっつり系
‣清潔感と無骨な実用性の両立がポイント
‣ステンレス製の作業台+落ち着いたカラー(黒・カーキなど)
‣ニオイ対策の換気と防油加工も内装設計に含める
☕🍹ドリンク系(コーヒー・スムージーなど)
‣スタイリッシュ or ナチュラル系が好まれる
‣コーヒー無垢材+アンティーク調、スムージーなら白系+グリーン装飾など
‣見せる収納や機材配置で“バリスタ感”を演出
📝どの業種でも「テーマカラー×素材統一」で内装に一貫性を持たせるのがブランディングの基本です。
おしゃれな内装にしたい場合でも、日々の清掃やメンテナンス性は見逃せないポイントです。
◎おすすめ素材
| パーツ | おすすめ素材 | 理由 | 
|---|---|---|
| 作業台・棚 | ステンレス/メラミン化粧板 | 耐水・耐熱・油汚れが落としやすい | 
| 壁面 | 防水パネル/塩ビクロス/アルミ複合板 | 拭き掃除がしやすく、劣化しにくい | 
| 床 | 防滑クッションフロア/アルミ床材 | 衛生的&水・油に強く、見た目も整いやすい | 
💡色の選び方ポイント
‣白・アイボリー系:清潔感◎/汚れが目立ちやすいが頻繁な清掃促進に
‣木目系:温かみとナチュラル感が出るが、防汚処理が必須
‣黒・グレー系:ホコリや水垢がやや目立ちやすい
キッチンカーは街中に出店する以上、見た目で「記憶される」「撮られる」ことがブランディングに直結します。
💡差別化ポイント
❶コンセプトに合った内装ストーリー
➡例:北海道食材×木造調=“牧場感”演出/アジアン料理×竹素材=“屋台感”アップ
❷内装とメニュー名・看板の統一感
➡ 名前や世界観に統一性があると、記憶されやすい
➌内装の一部に「撮影スポット」要素を加える
➡ ロゴ入りカップ・オリジナルカウンターサイン・照明演出など
📝競合が多い都市部では、味や価格以上に“記憶に残る印象”が勝敗を分ける場面もあります。一貫性のある内装は、その印象形成を大きく左右する武器です。

キッチンカーの内装は、単に見た目を整えるだけでなく、保健所の許可を得て、効率よく営業し、選ばれる店になるための“戦略的要素”です。この章では、初心者が押さえるべき内装の総まとめを解説します。
キッチンカー内装で多くの人が陥りがちな“失敗パターン”を避けるだけでも、開業リスクを大きく減らせます。
ミス①:保健所基準を満たしていない設計
ミス②:動線や収納が非効率で、営業中に混乱
ミス③:おしゃれ重視で清掃や実用性が犠牲に
これから設計・工事を進める方向けに、「これだけは確認しておきたい!」というポイントをチェックリスト形式でまとめました。
✅内装準備チェックリスト
□保健所の内装基準(給排水・手洗い・シンクなど)を確認した
□調理・接客・収納の動線を図面上でシミュレーションした
□使用予定メニューに必要な機器をリストアップ済み
□収納の量と位置は、作業性+衛生面で問題ないか
□素材は防汚性・耐久性に優れ、掃除しやすいものか
□スタイルやブランドイメージと内装が一貫しているか
□保健所に図面と写真を持って事前相談した
🚚上記すべてにチェックが入れば、保健所も集客もクリアできる“実力派内装”が実現可能です!
キッチンカーは「狭いからこそ」一目で“選ばれるかどうか”が決まる商売です。
◉通りすがりの数秒で「清潔感」「コンセプト」「安心感」が伝わるか
◉SNSで拡散される“ビジュアル的な魅力”を持っているか
◉見た目以上に作業効率・衛生管理が快適に保てるか
実店舗と違い、内装が売上・リピート・許可取得のすべてに直結します。だからこそ、キッチンカー開業を成功させるカギは「内装」だと言えるのです。
🔚まとめ:キッチンカー内装3つの柱
| 観点 | 要点 | 
|---|---|
| 保健所 | 設備基準・衛生動線・素材に準拠することが前提 | 
| 動線効率 | 調理・提供・接客すべてをストレスなく行える設計 | 
| 印象づけ | 世界観・コンセプト・清潔感で“記憶に残る店”を演出 |